レビュー|第35節【2025】【J1】【横浜FC】
J1 第35節 柏レイソル vs. 横浜FC

攻撃の連携 vs 守備の連携。
柏は人とボールを動かしながら、連動した攻撃で守備を崩しにかかる。一方、横浜FCはマークを素早く受け渡しながら、連携の取れた守備でフリーの選手を作らないよう、人で人を捕まえていく構図。
横浜FCとしては狙い通りに守りながら、カウンターからゴールに迫る場面もあった。
柏はやや攻めあぐねつつも主導権を握り、危険な場面を凌ぎながら試合を進めた。
互いにおおむねプラン通りに運び、高い強度で攻防が続いた前半だったが、交代をきっかけに後半に試合が動く。
柏は交代で入った選手がさらに強度を高めた一方、横浜FCは交代選手がうまく試合に入れず、それまでの強度を失ってしまう。
少しずつ守備に綻びが生まれ、マークがズレ始め、スペースやフリーの選手を作られる展開に。守る時間が増える中で、自由を与えた相手選手に隙を突かれ、立て続けに失点を喫した。
最終的には、チームの完成度=層の厚さが、勝敗を分ける結果となった。
それでは振り返っていきましょう。
(文章を少しでも短くするため、敬称略ですのでご了承ください。チーム内で苗字が他の選手と被っている場合は、両選手を名前にて記載。例: 鈴木準弥選手→準弥)
メンバー表

交代
【後半0分(HT)】
櫻川 ソロモン ▶️ 窪田 稜
【後半14分】
【後半30分】
福森 晃斗 ▶️ 新保 海鈴
ルキアン ▶️ 鈴木 武蔵
【後半44分】
山田 康太 ▶️ 小倉 陽太
全体評
90分の変化
横浜FCの守備の強度が、柏の攻撃の強度を上回っていた前半
この試合におけるだいたいの定位置は下図のようになった。

前半に限って言えば、横浜FCの守備の強度が柏の攻撃を上回り、狙い通りの展開に持ち込めていた。
柏はボールを保持しながらも、危険な形をほとんど作れずにいた。
横浜FCは引いて守りっぱなしにはならず、ボールが下がればラインを上げる、それを繰り返しながら、ミドルブロックを形成。
ボール付近で数的同数を作れればハイプレスに出るなど、プレスに行く・行かないの判断も局面を見極めながら冷静に行えていた。
無理をせず、的確な判断で強度を維持していたのが印象的だ。
柏はパス交換を繰り返しながら、選手がポジションを次々と入れ替える非常に流動的な攻撃を展開。
それに対して横浜FCは、一対一で潰すようなマンツーマン気味の対応を取りつつ、定位置を大きく崩さずに対応ができていた。
深追いはせず、相手の縦関係が入れ替われば素早くマークを受け渡し、自分はすぐに余りそうな選手を捕まえる。
こうした連携で柏の攻撃をうまく消し続けていた。
一人が二人を見るような“漏れ”を作らず、二人で一人を見るような“ダブり”も作らない。
その徹底がチーム全体に共有されていた。
「ボールは勝手にゴールへ入らない。必ず誰かが入れる」。
危険なエリアで自由を与えず、一対一を制して封じる守備ができているうちは、失点のリスクを最小限に抑えられる。
前半の横浜FCは、まさにそれを体現していた。
交代がもたらした明暗 - 柏の強度維持と横浜FCの失速
前半を受けて、柏はボールを持てていることに満足せず(「このままいけば点が入る」とは考えず)、横浜FCにうまく守られていると判断したのか、ハーフタイムで早くも動いてくる。
モビリティや連携、守備面に特徴のある選手を減らし、ドリブルで仕掛けられる選手や、背負ってボールをキープできる選手を投入。
一対一の強さをベースにする横浜FCの守備を、正面から上回る構成へと変えてきた。
この”数的同数のまま個の力で打開する形”は、横浜FCにとって今季ずっと苦しめられてきたパターンであり、柏も漏れなくそれを実行してきた。
一方の横浜FCもハーフタイム明けに動く。
窪田やアダイウトンといった、攻撃で違いを生める選手を投入。
ただこれが…結果的に、守備面での判断ミスが増え、前半に見せていた高い守備強度を失ってしまうことに繋がる。
たとえば、窪田が深くまでマークについていって、後ろの山根と被り、上がってきた左CBやWBの選手をフリーにしてしまう。
そこへ近くのララがカバーに入ることでマークが連鎖的にズレ、バイタルエリアで自由にミドルやキーパスを許す場面が増えた。
さらに前半から出ていた選手の足も止まり、ラインが下がり気味に。
結果として、柏に押し込まれる時間が長くなった。
逆に柏は、投入したフレッシュな選手が機能し、攻撃の強度を一段と高める。
両チーム交代の影響が色濃く出て、試合はあっという間に動く(立て続けに2得点)。
上位チームは、後半にペースを落とすどころか、むしろ上げてくる。
交代で強度が落ちてしまうと、相手も同じように落ちてくれない限り、勝利は難しい。
横浜FCとしては、本来は交代によって前半の守備強度を維持したかった。
だが、代わって入った選手が守備にうまく入れず、結果的にチーム全体の強度を保てなかった。
今後に向けては、まず戦術理解度を含めたチーム全体の力を高めること。
さらに、今節のように交代で守備の強度が下がる局面では、攻撃の強度を上げるなど、別のプランに移行できる柔軟さも必要だ。
守備と攻撃を合わせたトータルの強度を保ちながら、90分を通して「変わらず強度を保つのか」「変えて強度を保つのか」。そのマネジメントが、上位相手に勝ち点を拾う鍵になる。
なかなか形にならない攻撃
ロングボール主体のダイレクト・プレー
チームの狙いは、ロングボールを軸にしたダイレクトプレー。
攻撃のスタート位置(敵陣では味方も敵も少なく、スペースがある)と、前線の特徴(対人に強い)を考えれば、シナジーの高い選択と言える。
スタイルとしては決して間違っていない。
しかし現状では、それが形にならず、得点までつながった場面も再現できていない印象だ。
まず、理想とする攻撃の流れを3つのフェーズに分けて整理してみたい。
① ボール奪取 → できるだけ早く正確に前線へつける
⬇️
② ボールを収めて味方の押し上げを待つ&一人でも多く押し上がる
⬇️
③ 少ないプレー回数(パス・ドリブル)でシュートまで持ち込む
この3段階が、チームが目指す基本形であり、最も期待値の高い攻撃パターンといえるだろう。
① ボール奪取 → できるだけ早く正確に前線へつける
まず最初のフェーズは、ボール奪取から前線への展開。
ここは単純に、キックの質が足りていない。前線で収めるためのパスが2本に1本以上、ソロなどのターゲットに届いていない。
今節も「蹴っては相手に渡り、ロスト」という形が繰り返された。
改善策として、もちろんキック精度を高めることが第一だ。
だが、質が伴わない原因の半分以上は、蹴る時の状態が悪いことにもある。
そこは「サポートの意識」が足りていない。
今のチームは「奪ったらすぐ蹴る」「蹴る以外の選手は前へ走る」に偏っており、蹴る選手が窮屈な状態でプレーしている。
寄せられて余裕がなく、結果としてミスキックや無理なコースが増えてしまう。
理想は、ポゼッション志向ではなくとも、良い体勢で蹴る選手を作ること。
ボール奪取後は、近くの味方と1〜2本だけ短くつなぎ、蹴るための準備を整える、その意識をもう少し高めたい。
現体制も煮詰まってきて、今はダイレクトに蹴る意識ばかりが強くなってきているように感じる。
前体制時はサイドで△を作って繋げる意識が強すぎた。
蹴る意識と繋ぐ意識のバランスは、それこそ体制変更時が変化の過程でちょうど良くなっていた感もあり、今度は狙ってそこへ持って行けたら面白そうだ。
② ボールを収めて味方の押し上げを待つ&一人でも多く押し上がる
ロングボールを蹴れば、当然ボールだけが敵陣へ飛んでいく。
守備位置から瞬時に追いつけるわけではないため、前線の選手がボールを収めて味方が押し上がる時間を作る必要がある。
今節は、ボールを収めても押し上がりを待たずにパスを出したり、一人で仕掛けてしまう場面が目立った。
これでは攻撃の人数が足りず、相手DFにとっても読みやすい展開になる。
結果、ボールを奪ってもすぐロストという悪循環が続いた。
ソロモンのように背負うだけが時間を作る方法ではない。
アダや武蔵にもそれぞれの形で時間を作れるプレーが見られる。
チームとして収まる・失うパターンを整理して、「押し上がりを待つ間の形」を明確にしたい。
あとは、思い切って今より多くの選手が押し上がる時間を限定的に増やすのも面白そうだ。
③ 少ないプレー回数(パス・ドリブル)でシュートまで持ち込む
①②がうまく機能した場面では、時間をかけず、人数をかけた良い形の攻撃がいくつか見られた。
ここまで運べれば、相手は下がりながら守るため、前を向ける攻撃側が数的同数でも優位になる。
実際にゴールに迫る場面もあったが、決め切れず。
それは単純な決定力の問題だけでなく、前線の連動性と距離感の悪さも影響している。
今は、前を向いた際に各選手がそれぞれにスペースを探してバラバラに動いてしまっている。
理想は、メインターゲットから逆算した位置取り。
横のレーン、マイナスの位置など、近い距離で連動することで攻撃に厚みを持たせたい。
それができれば、溢れても味方に届くことや、相手DFがマークの判断を誤るなどが期待できる。
守備側にとっても、起こりうる状況が“足し算”から“掛け算”になるような連動は、より脅威となる。
攻撃を“個の勝負”から“複数の選択肢が連動する仕組み”へと昇華できるかが、今後の鍵だ。
個別評
(採点 + コメント)(10.0点満点,及第点を6.0に設定)(試合結果を採点に反映: 勝利時の平均を7.0、敗戦時の平均を5.0に設定)(出場時間35分以下は採点無し)
GK
ヤクブ スウォビィク: 5.5
安定したプレーと継続的なコーチングで守備を支えた。それでも2失点はいずれも個人としてはノーチャンスだったものの、もう少し味方DFを上手く動かしたかった場面も。シュートストッパーとしてだけでなく、最終ラインの頭脳としての存在感にも期待したい。
市川 暉記: -
DF
岩武 克弥: 5.5
ボニ不在の中で、いつも以上に最後に入って危険な場面を回避していた。安定した守備でチームを支える。
福森 晃斗: 6.0
この試合でも守備の責任感を強く感じた。自身のエリアやマークをしっかり守りつつ、クリアを一つでも多くパスに変えて、守るだけにならないよう意識していた。キックの質は相変わらず文句なし。カウンターのスタート時に、もっと福森にボールを集めたい。
伊藤 槙人: 5.5
ボニと比較すると守備範囲などで見劣りする部分はあるが、基本的なタスクをしっかりこなし、ボニを欠いたチームを救うプレーはできていたはず。今節の真ん中での経験を、次節以降左右CBでのプレーに活かしてほしい。どこでボールを受けて欲しいのか、いつだと前に出て行っても平気なのか、など。
山崎 浩介: -
MF
山田康太: 6.0
攻守での献身性はもちろん、ここ最近ずっと求めていた「技術に裏付けられた積極的なドリブル」を特に評価したい。ボール奪取から一人で3人ほどのプレスをかわし、その後の展開の質を大きく引き上げた。
ユーリ ララ: 5.5
柏のポジショナルプレーに惑わされることなく、細かくポジションを変えながら賢明に守備を続けた。反面、柏をリスペクトしすぎたのか、少し大人しい印象も。クレバーなのは素晴らしいが、多少強引にでもボールを奪いにいく怖さを出してこそララ。次節に期待したい。
山根永遠: 5.5
フェイントで相手を誘い、パスを出させてインターセプトするなど、前向きな守備が光っている。守備が良いだけに、攻撃時のキックの質が伴わないのが惜しい。真面目さゆえに周囲を見逃して無理な体勢から前線へ蹴ってしまう場面も増えている。もう少し肩の力を抜いて、味方を使いながら展開できると◎。
細井 響: 5.5
最近はCBよりWBの方がしっくりきている印象。来季彼が戦う舞台をJ1にするためにも、絶対に残留を果たしたい。
小倉 陽太: -
遠藤貴成: -
新保海鈴: -
FW
櫻川 ソロモン: 5.5
HTで交代。ボールがほとんど来ない中でも、来た時にはしっかり収めて溜めを作れていた。2度のチャンスシーンにも関与。交代の意図は不明だが、負傷でないことを願う。
ルキアン:5.5
前半に決定的な場面を迎えるも決めきれず。守備の貢献は相変わらず高いが、本職FWとして結果が欲しい。気持ちを切らさず挑み続けてほしい。
ジョアン パウロ: 5.5
今節はキックを含めプレー全体の質が上がらず。コンディションがやや落ちているようにも見える。しっかり休んで次に備えたい
窪田 稜: 5.0
攻撃で違いを生みたかったが、その前に守備で柏のポゼッションに振り回され、自身のエリアを空けてしまう場面が多かった。守備面は途中加入ゆえ仕方ない部分もあるが、攻撃面でチームメイトと連携が取れるようになると大きな武器になる。
アダイウトン: 5.0
投入直後に単騎突破で存在感を示すも、その後はやや沈黙。戦術理解が進み、うまく攻守に動けるようになった反面、加入当初の“めちゃくちゃさ”が薄れた印象。チームプレーも大切だが、アダにはもっとゴールだけを見てほしい。
鈴木武蔵: -
伊藤 翔: -
今節はここまで
残り3試合で、残留圏のF・マリノスとの勝点差は5(得失点差13)。いよいよ後がない。
ここまでの経緯を踏まえれば、事実上のチェックメイト、まともに考えれば、降格はほぼ避けられない。
ならば、まともに考える意味はもうない。
極端な意見かもしれないが、その先に待つのが降格なら、いま必要なのは“思い切った戦い”だと思う。
しかも、選手もチームも心から楽しめる戦い方を。
厳しさだけでは、うまくいかない瞬間に簡単に折れてしまう。けれど「楽しさ」があれば、最後までやり切ることができる。
対戦カードを考えれば、手堅く戦う選択もある。
だが、それでは“手堅く降格する”未来が待っているように感じる。
思い出してほしい。
ルヴァン杯ベスト4・広島戦。ホームではまともに戦って力負けし、アウェイでもそのまま手堅く戦って、やっぱり力負けしてしまった。
あのとき、ただ堅くやってしまったことが今でも悔やまれる。
あの試合で“攻撃に割り切った別のやり方”を試していれば、今ごろチームには敗戦以外に、別のオプションが残ったかもしれない。
ルヴァン杯ベスト16・C大阪戦では、ただ“4点を取ることだけ”を考えて準備した。
結果的にGKの退場にも助けられたが、そういったミラクルを呼び込む勢いがあった。
堅実に守備中心でやってきたチームが、いま初めて「攻撃だけを考えていい」状況にある。
この状況を前向きに捉えて、ワクワクしながら次の試合に向かってほしい。
今節も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
それでは、また次節で。