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レビュー|2023シーズンスタート(第1-5節まで):横浜FC【前編】

2023シーズンJ1がいよいよ開幕。リーグ戦5試合を終えて、

横浜FC 0-1 名古屋 ● 負け

湘南 2-2 横浜FC ▲ 引き分け

横浜FC 1-3 鹿島 ● 負け

FC東京 3-1 横浜FC ● 負け

横浜F4-1 京都 ● 負け

横浜FCは0勝1分4敗の勝点1で全体最下位(18位)

シーズン前に思い描いていたビジョンとは違うスタートを切ることとなった。

今回はシーズンの入りである第1節から第5節までを簡単に振り返る。

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目次

 

オフには、昨季(22シーズン)の主力をしっかり残しながら、ンドカ・ボニフェイスなどJ2で活躍した選手を多く獲得。またその他大きなところではヘッドコーチにジョンハッチンソン氏を招聘。

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1.攻撃(チームレビュー)

ハッチンソン氏のもと、チーム全体のインテンシティをJ1の水準へと高め、四方さんが横浜FCへ来た時から思い描く、しっかり後ろから繋ぎボールを多く保持することでゲーム全体を支配するサッカーへの挑戦を本格始動した。

今季も開幕からポゼッションへ挑戦。相違点は?

昨季も初戦からシーズン途中の現実路線へ戦術シフトするまでの間、ボールを後ろから繋ぐ(ポゼッション)サッカーへ挑戦していたが、昨季と今季でどのように違うのか、または同じなのか。各シーズンをそれぞれ簡単にまとめてみる。

昨シーズン序盤:

3-2-4-1(4-4-2可変)で、両側CBの一方もサイド高い位置へ上がりWBとシャドーでトライアングルを形成するような形で、サイドの高い位置でボールを保持しながら、主にクロスで仕留める。

今シーズン現在まで:

基本は4-2-3-1の可変。SBが中へ入り中盤のスペースを埋め、その分ボランチ(あるいはインサイドハーフとも言えるが)はトップ下と共にサイドへ流れるような形で、ボールをサイドの高い位置へ運び、WBとトライアングルでボールを保持。その状態から、フリーの選手を作り高精度クロスを狙うことは昨季ほど多くないが、ポケット(エリア横)を活用するなど、ショートパスを繋げながらエリア内へ侵入する意識は高くなったように感じる。

SBが中へ入ると述べたが、そのままWBの外を回る(オーバラップする)シーンも少なくないため、サイドへ人数をかけるパターンは複数用意してそうだ。

 

まとめると、アプローチこそ大きく異なるが、昨季も今季もボールを細かく繋ぎながら相手陣内へ侵入し、サイドの高い位置で数的優位性を作りながら崩そうという狙いは共通して見える。もしかするとそれこそが四方田さんの、あるいは昼田さんの目指す(観客を魅了すると考えている)攻撃なのかもしれない。

ゴールがセンターレーンに設置されている以上、センターはどのチームにとっても当然開けたくない。そのため相手陣内でボールを保持したい場合、サイドは中央より長い時間ボールを保持しやすいのはもちろん、ボールを奪われたとしても、相手の攻撃はサイドの低い位置が起点になるため、被カウンターの面でもリスクを下げるメリットがある。

5節までの攻撃面における総評としては

残留を目指すチームということを考えれば、内容は十分にやれている印象

新たなポゼッションサッカーへ挑戦している中で、主導権を握れる時間帯もあって、良い形も出て、多くはないがフィニッシュまでいくこともできている

得点数はもう少し欲しいが、こちらが早くに失点することでリードした相手が守備に比重を置く時間が長くなり、なかなか得点しづらい影響もあるだろう。もっと五分五分なスコア展開で90分やれれば、得点は自然と増えていくはずだ。

ビルドアップで変な奪われ方をしてしまうことや、アタッキングサードまで良い形で運んだ後になかなかチャンスに繋げられないことなど、問題点は毎試合少しずつ修正・整理され、共通認識も進むことで改善も見られる

チームがポゼッションサッカーへ拘ること自体に対して

昼田さんを筆頭にフロントがエンターテイメント性を追求していることは置いておいて、戦術の観点で見ても、小川航基というストライカーを主軸に据えるなら、全体を押し上げて後ろの選手も積極的に攻撃参加できるポゼッションはそれほど悪い攻め方ではない。

直近対戦した京都に惨敗したことで、シンプルに縦に攻める(縦ポンのような)サッカーへ憧れる気持ちが出るのももちろん理解できるが、それをするにはトップにポストプレーやスピードが求められる。

小川をポストプレーなど彼の主戦場でない部分で多く(長く)プレーさせるよりは、今のように組み立て≦フィニッシュに集中できる攻め方は合っているのかもしれない。

守備が安定してきて攻撃的な選手を増やせるようになれば、サウロやヒアンなど他のストライカーをトップに置くなど小川を今とは違うタスク・ポジション(トップ下やシャドーにするなど)で使うことで、もっと縦の素早さを志向したサッカーへ変える可能性も出てくるだろう。

昨季に比較してロングパス・フィードが少ないが

昨季印象的だった斜めに大きなサイドチェンジのような、ロングフィード・パスは出さない(見えてない)というよりは、見えてはいるが出せないでいるという段階にここまでは映る

単純に深い位置でフリーな選手がおそらく少ない。一見相手DFと距離は離れて見えても、長いボールにしっかり対応できる間合いでマークされてしまっている。

こちらのポゼッションに怖さ(パスやクロス、ドリブルの脅威)がなく相手のブロックをなかなか揺さぶることができていないのか、J2と比べてJ1ではそもそもブロックを不用意に動かさないチームが多いのか、原因は様々考えられるが、いずれにせよ昨季と比較して通せるパス・フィードは格段に選択肢を減らしている。

ただ、その辺りに関してあまり心配はしていない。少しずつでも選手間で互いの特徴を掴んだり、ボールの動かし方でパターンが増えていけば、判断やプレーのスピードも上がり今よりプレーの幅も出てくるはずだ。結果的に昨季のような印象的なロングパス・フィードも多くなる。

2.守備(チームレビュー)

ポゼッションサッカーを志向する以上はやはり、ボールを失った瞬間からすぐにプレッシングをかけ、素早くボールを再奪取することで自チームのボール保持率を高くしたい狙いは、ウチもある程度感じる。

被カウンターのリスクが低い場合(主導権を握っている時間)は、フォーメーションはある程度崩してでも人数をかけてボールを奪いにいく

ただもちろん奪いきれないこともある(現状としてその回数の方が上回ってしまっている)が、その場合は帰陣。シンプルに自陣でブロックを敷く。

マークを互いに受け渡し、WB(坂本など)が降りて相手のSBのところを見るなど、そこからは概ね一般的なゾーンディフェンスに近い形でゴール前を堅める。

攻撃に比較して守備は至急の改善が必要

結果がなかなか追いつかないのはやはり失点の部分。前で述べたように攻撃が少し良くなっても、ここ数節のようにあまりに簡単に失点してしまっていては試合にならない。「守備は攻撃の準備」という考え方があるように、攻撃をするためにもやはりまずは守備がある程度成立しないといけない。

試合やトレーニングなど選手のプレー単体で見れば、選手たちの個の質でスコアのように大きく相手と差をつけられているとは思えない。では何がうまくいっていないのか、なかなか試合の中では見えづらい部分ではあるが少し考えてみる。

選手間の連携:

単純に選手間で連携が取れていないケースも実際のところは多いように見える。

数では同等あるいは優位に立っていても、チャレンジ&カバーが被ってしまってスペースができてしまったり、シュートやパスコースの限定も被ってしまってがら空きのコースができてしまうことも。

多くはないカウンターがそのまま失点繋がってしまっているのも、これらの部分が大きな原因か。

ただ、認知・反応できていない訳ではないので、選手間で連携が深まっていけば改善されていく期待感はある。

戦術のミスマッチ:

守備戦術を整理する必要もありそうだ。

(1) そもそも前に述べたような守備の原則部分が詰まっていないのは、守備的な選手がタスク過多になっている可能性もある

(2) またここが最も簡単ではないが、選手間の互換性も考えていく・見つけていく必要がある。

例えばブロと岩武は互換性が非常に高いユニットだった。ブロは守備的なGKで空中含めゴール前は絶対に穴を開けないタイプ。岩武は広いカバー範囲とフィードが特徴。二人を中心にペナルティエリアを制した。

現在はチグハグで最適な組み合わせを見つけられていない。セットプレーでの失点はおそらくその影響も大きい。相手のストロングに対応するためにも、互換性の高い組み合わせを見つけたい(できれば複数パターン)

(3) 守備時に何か無理が発生している印象がある。ブロックを敷いてゾーンで守る際、攻撃で前がかりになった多くの選手が残り、そのまま戻りきれず揃わないことも多い。特にWBが印象的。攻撃時ゴールライン付近まで高い位置を取り、その後すぐに守備で自陣ペナ横辺りまで戻らないとチーム守備が成立しない場面が多く見られ、ポジショニングがどうしても攻守で中途半端になってしまっている。WBが深い位置まで侵入した場合はそこに中盤の選手が一人入るのか、相手SBの位置でWBのポジション取りも変えるのか。

攻撃と守備の戦術でギャップが生まれているため、その辺りの整理は今後進められるはずだ。"守備を改善するため"、さっそく6節以降"攻撃の形を変える"可能性も考えられる。

 

3.選手別レビュー

→【後編】に続きます!