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三ツ沢からフットボールを観測

レビュー|2023シーズンスタート(第1-5節まで):横浜FC【後編】

リーグ戦5試合を終えて、横浜FCは0勝1分4敗の勝点1で全体最下位(18位)。シーズン前に思い描いていたビジョンとは違うスタートを切ることとなった。

前回【前編】では、チームレビューを中心にシーズンの入りである第1節から第5節までを振り返った⬇️

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今回【後編】は、第1節から第5節までで試合に出ている選手を中心にひとりひとり個別でここまでを簡単に振り返っていく(プレー時間が短いなどレビューをするにあたり不確定要素が多い選手は記載なし)

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目次

3.選手別レビュー

ポジションごと背番号順

FW -Foward-

7. 山下 諒也

個の優位性を生むことができる数少ない存在。彼のスピードはやはり怪物。J2と比較してフリーになれる回数がぐっと減り、時には3人に囲まれる場面もあるが、それだけでも相手陣形を乱す存在感がある。

【前編】でロングパス・フィードはフリーの受け手がいないため出せない状態にチームはあると述べたが、山下においては"彼だけが追いつけるボール"が存在するため、出し手もストレスなくスペースへ長いフィードを蹴ることができている。山下が出てくると攻撃に幅が生まれるのは、彼が生み出すサイドの優位性の影響も大きい。

あとはフリーになってからの部分。昨季ほど多くフリーの場面は作れないため、実際に相手を剥がしてからのクロスやシュートなどのプレーの質・強度が高くなっていけば、スタメン獲得はもちろん、チームを勝たせる選手へと大きく飛躍することは間違いない。

9. マルセロ ヒアン

開幕戦では、体のキレやシュートの精度などまだまだトップフォームからは遠い印象を受けた。また、現状のチーム戦術では小川とポジションが被ることもあり出場機会を得られていない。

ただ、その能力の高さはもちろん疑いようがなく、彼の持つ「自分は自分のやれることをやってチームを救うだけです」といったメンタルも今のチーム状況には合っている。プレーで辛い状況にあるチームへ自信とリバウンドメンタリティをもたらすことができるはずだ。

カップ戦や途中交代で活躍してアピールを続ければチャンスは必ず来る。あとは試合に出るために何が必要か。

(1)まずは単純に小川との競争に勝つこと。小川を軸に考えた今の戦術をひっくり返すほどのインパクトを残すか、小川以上に今の戦術にフィットしてしまうか。

(2)あるいはチームの守備が安定してくれば、攻撃的な選手に割ける枚数が増えるため、2トップの一角やトップ下として今の前線のメンバーと併用or入れ替わるようにして出る可能性も高くなる。

10. カプリーニ

攻撃の意識が高く、主導権を握れば常にゴールを目指す姿勢がチームにスイッチを入れる。ポゼッションサッカーだとどうしてもボールを持つことを優先したリスクの低いプレー選択をしてしまいそうだが、常にゴールへ最も近づく選択肢が無いかを探し、あればその選択肢を取り溢すことなく実行する。攻め気が強いあまり無理な攻撃から中央付近でリスクの高い失い方をするのは避けたいが、元々周りを見て選手を使うのが上手い選手、意外と冷静にピッチの状況は把握できてそうだ。試合を重ねるごとに、危機察知からプレーの使い分けは上手くなっている印象がある。

また、本当に素晴らしいプレースキックの持ち主で、彼がいるといないでCKや直接フリーキックの期待値は大きく変わる。できれば出場時間を長くしてプレーの回数を増やしたいと四方さんも考えているかもしれないが、現状リーグではジョーカーでの起用がメインとなっている。

チーム戦術として守備の貢献度も高く要求されるWBでの起用は少しリスクが高く、一方トップ下の序列では長谷川にリードを許している。だが小川のマークが厳しくなるにつれて付近にスペースが生まれ、トップ下に決定機も多くなっているため、長谷川に比較して決定力の高さをアピールできればポジションを確立できる可能性は十分にある。

個人的には、WBとしてカプリーニに似合わない守備に奔走する姿より、トップ下として今のビルドアップにフィットして、ゴールにアシスト・チャンスメイクでチームを勝たせる活躍に期待をしたい。

13. サウロ ミネイロ

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15. 伊藤 翔

プレーを見る限りコンディションに大きく問題はなさそうだが、トップとトップ下の役割をこなせるユーティリティ性は示すも、大きなインパクトは残せていない。プレー時間が短い影響ももちろんある。志向する戦術の中で、自分のストロングを発揮するプランを見つけることができるか。このまま小川や長谷川の交代要員に甘んじる男ではないはず。

18. 小川 航基

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ここまで5試合4得点で得点王レースのトップを走る、まさにエースオブエースの活躍。彼のために用意されたチーム戦術へゴールで応える。

後ろからチーム全体でボールを繋ぎながら相手ゴール前へ押し込み決定的な形を作るスタイルにおいて、やはり求められるのは圧倒的な決定力(決定率25%以上を狙いたい)。シュートを外す(キャッチされる)=相手ボールになる=主導権が入れ替わってしまうため、不用意にシュートは打ちたくない。どれだけ献身的にポストプレーをしても、繋いで繋いでせっかく作った決定機を不意にしては意味がない。逆に、例えほとんどの時間で消えたとしても、最後の決定機を確実に決めれば彼の役割は十分とも言える。「良い形で彼に入れば必ず決めてくれる」と味方の体に浸透していくほど迷いがなくなり、判断も早くなり、攻撃にもっと幅ができてくるはずだ。

それを続けた先で(今もその状態に近いが)存在が脅威になりマークが厳しくなれば、必ず彼の近くでスペースが生まれやすくなり、2列目の攻撃参加やセットプレーが活きてくる。

絶対的なエースでチームの主役だからこそ要求も大きい。将来の日本代表ならその壁を超えてくれるはずだ。

28. グエン コンフォン

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29. 石井 快征

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29. 山根 永遠

仕掛けるドリブルや献身的な守備、スピードなど、攻守両面である程度自分のプレーをできている。実はそういった選手は多くないため、このまま攻守のバランスを取りながら成長することが山根のためには一番良い印象はあるのだが、一方で今のチームでどう活躍するのかは想像より難しい課題かもしれない。

昨季のように3-4-2-1であれば、両サイドのWBは攻守で等しく仕事を要求されるためバランスの良さが今以上に重要視されたが、今季はサイドに2枚(SB,WB)を置く4-2-3-1。WBの守備の献身性はもちろんベース部分として大事だが、やはりチームが勝つためには攻撃で違いを生まなければならない。具体的に言えばアシストやゴール、プレアシスト。

バランスを保ったまま攻守コンプリートできればもちろん理想的ではあるが(もしそうなれば引く手数多になるだろうが…)今のチームでポジションを確立するためには、まず攻撃の武器を今以上に磨いていく必要はありそうだ。

ただし現在、攻撃で絶対的なインパクトを残せているWBはチームに少ない。ここからの成長次第でファーストチョイスになれる可能性は十分にある。

MF -Mid Fielder-

4. ユーリ ララ

開幕してすぐにインテンシティの高さを見せつける。素早いプレッシングに、高いボール奪取力。ガブ&ボニと3人で守備を完結してみせた。

足元の技術も高く、狭いスペースで臆することなくボールを受けると細かくパスを繋げながらリズムを作り、相手陣内へと押し上げていく。

ただ直近は少し空回り気味。

ボール奪取の回数も減少傾向にあり、プレスのタイミングがズレて相手にパスを思うように通されてしまう(奪えない)ことも多い。ユーリ個人の戦術理解の問題なのか、選手間のコミュニケーションなのか、チームとしてプレスのコンセプトが浸透していないのか。いずれにせよ、なぜ以前よりプレッシングがハマらなくなったのかが改善されれば、比例してユーリのパフォーマンスも向上しそうだ。

もしかして同様の原因なのかもしれないが、ビルドアップ時に寄せてきた相手に気が付かずボールをロストするシーンが増えてきたことも気になる。

最初に述べた通りインテンシティも非常に高く、ポゼッションサッカーを志向する上で重要な選手のひとり。守備を安定させ、チームの失点連鎖を止めることができるか。

14. 高井 和馬

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16. 長谷川 竜也

長谷川がもう3人いればやりたいポゼッションサッカーは成立するのだろう、そう思わせるほどプレー強度がズバ抜けている。

いつでもボールを出し受けできる最適なポジション取り、ドリブルやパスのプレー選択と実行を非常に高い水準で継続している。それでいて体のキレで判断する限りまだトップフォームで無いように見えるから本当にワクワクさせてくれる選手だ。

シュートのキック力と精度の低下から決定力が下がってしまっている現状は少し気になるが、7番や11番ロールから10番ロールに転向する中で、プレーの優先度がどうしてもシュートからパスやドリブルが高くなる変化があるので、決定力低下はよく見かける現象ではある。彼の事だから、早い段階で修正してくるだろう。あまり心配はしていない。

個人として問題がないなら次はチームの問題に対して要求されてしまうから選手は辛い立場だが、彼の高いインテリジェンスをチーム全体へ伝播することができれば間違いなく浮上のきっかけになるだろう。現在、押し込んだ展開で彼の意図にしっかり付いていけているのは小川と中村、三田が印象的であり、彼らがまるで中間管理職のように他の選手へ意識を共有していけるかも重要になりそうだ。

サイド(WB)起用を熱望する声が聞こえるが、トップ下起用でも実質アタッキングサードを広く動き回っているため、右でも左でも真ん中でもボールに絡むことができ、今のポジションの方がチームで最も"上手い"選手を常に有効活用できるメリットがありそうだ。

横浜FCにおいてはスペシャルでオンリーワンな選手。使われ方やピッチ外の役割が川崎の時と大きく変わることへ不思議はない。

偽トップ下として、長谷川が新境地(新たなプレースタイル)を確立して、なお一層輝く未来を楽しみにしたい。

20. 井上 潮音

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コントロールやパスの能力は当然高いものを持っているが、反応も良くボールを獲る技術も高いため、直近はボランチ(またはIH)で花を咲かせつつある。

別のチームで見ていた時から、(地面が近いメリットを活かす)ボールの持ち方や奪い方、当たり負けしないバランスの良さ、パスのアイデアなどがマルコ・ヴェラッティ(現イタリア代表)など小柄な名ボランチたちに重なり「ボランチに腰を据えたらもっと凄い選手になりそう」と勝手ながら思っていたため、最近のポジションでの出場は一層期待を膨らませている。

懐が非常に深く、ボールを持つと多少囲まれても奪われない。狭いスペースでも関係なくパスのアイデアも豊富だ。

一発でゴールへ繋がる所謂キラーパスのようなプレーは、本人の能力を考えればまだまだ少ないが、連携が深まっていくことで量産体制に入ってもおかしくない。

あえて課題を上げるなら、チームメイトへの遠慮が少し気になる。ショートパス一つとっても井上は緩急や浮かせるなど多彩に使い分けることができているが、ハードボール(強いパス)の選択がまだ少ないように感じる。受け手を気遣ったコントロールしやすいボールではあるが、味方を信用してもっと強く速いパスをつけても良い場面はまだまだある。ビルドアップでチーム全体のパススピードが上がれば次のプレーへの余裕が生まれ、ボール保持の質も上がるはずだ。

25. 三田 啓貴

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開幕戦からさっそくJ1の基準を示すインテンシティを見せた。J1でボールを保持して主導権を握りたいなら、三田のプレー強度が出場する選手たちの基準になるのかもしれない。

一方で、戦術理解度は開幕から徐々に上げている印象。攻守ともポジション取りなど周囲との連携も整理されてきて、いよいよここから三田の特徴を出していけそうだ。

ストロングポイントはやはりキック。プレースキックはもちろんだが、流れの中で期待値の高いミドルシュートを狙うことや中長距離のパスで展開を変えるなど。今まで詰めてきたショートパスの距離感や攻守におけるポジション取りなどはそのままに、自分のプレーを出していけるかに注目したい。

31. 坂本 亘基

山根と同様に攻守にバランスの良い選手。本人のことを考えれば、このままバランスよく全体的に能力を伸ばしていくのが理想的だが、今の4-2-3-1のWBで出る場合チームが勝つためには攻撃力がさらに求められていく。

昨季の形(3-4-2-1)でWBとして入ったら、どのようなプレーを見せてくれるのかは気になるところだが。

少し無理を感じる今の守備タスクもしっかりこなしてしまう献身性と豊富な運動量。おそらく他の選手を抑えメンバー入りを続けているのは守備力を評価されてのことだろう。

対照的に、攻撃の部分(4-2-3-1での)WBとしては物足りない現状。ドリブルで相手のマークを剥がすことができず、失うリスクを考えて仕掛ける回数自体も少なくなっている。ただ最近はカウンター時などで、中に入ることでプレーのスペースを確保し、得意のキックを見せる場面も新しく増えてきた。

J2で見せたようなプレーを今後どのようにしてJ1で再現していくか。

個での打開力をJ1でも発揮できるよう成長させることは一つ。二つ目として、フリーから良質なクロスやシュートを量産できるかはチーム戦術の浸透も鍵になる。チームの問題が改善されたその時に、フリーからしっかりキックで違いを生み出せるよう準備はしておきたい。

33. 近藤 友喜

バイトリーダーは入社一年目からさっそく良い仕事をする。特別指定の期間でしっかりJリーグの水準へ押し上げてきた印象。

仕掛けるドリブルなど縦の推進力を見せていて、近藤のサイドを使って相手陣内へボールを押し込む展開も多い。

ドリブルや連携で相手を剥がす・抜く、そこから危険なクロスを入れるところまではできているが、あと一歩、中と合わず得点へ繋げられていない。攻撃は水物で結果が出なければポジションを失ってしまう可能性もあるだけに、あとはアシスト・ゴール・プレアシストなど早い段階で結果を出しておきたい。

172cmと決して身長は高くないにも関わらず、ボールの落下地点を読み体を入れる(前に入り相手を背負う、相手を騙してフリーでボールを受ける)のが上手いこともあり、ロングボールがよく収まる。それは空中戦を本業とするCBを相手に競り合う小川(真ん中)より可能性の高い選択肢になることも多い。後ろから短く繋ぐにしても、ハイプレスから相手が全体を押し上げてくるのを牽制する・いなすためにも長いボールの選択肢は常に持っておきたく、近藤の有無でビルドアップの確率は変わってきそうだ。

35. 宇田 光史朗

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36. 高塩 隼生

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37. 清水 悠斗

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41. 新井 瑞希

カップ戦でコンスタントに出場できているものの、リーグ戦の出場は無い。おそらく現在は1.5軍的な立ち位置なのだろう。裏を返せば、きっかけ次第でリーグ戦へ絡んでくる確率が最も高い選手の一人。カップ戦で相手の強度がそれほど高くない影響もあり狙い通りプレーできているケースも多いため、その辺りは考慮した上で考えていきたい。

ストロングポイントはやはり、独特なリズムが特徴のドリブル。良い状態で持てば相手はほとんど飛び込んで来れず、個での打開力はチーム随一であることに間違いはない。

押し込んだ展開で、一人剥がせば・抜けば決定機(ゴールやアシスト)という場面をいかに作れるかがチームの課題としたら、新井個人としては、フリーになった場面でクロスやシュートで決定的な仕事を確実にできるよう準備をしておきたい。

"フリーにしても危険なプレーが出てこない"と相手に判断されれば、手に負えないドリブルは気持ちよくさせておいて、その先(精度の低いクロスやシュート)で確実にボールを奪う守り方にシフトされてしまう。現代守備の基本は"相手の良い攻撃を止める"のではなく、"得点に繋がりづらい悪い攻撃に誘導して期待値の低いフィニッシュをさせてボールを獲る"こと(クロスが合わない,外に出る・シュートが枠外,弱い,ブロックに直撃など)。

ドリブルで抜かれたら決定機を作られて危険だと思えば思うほど相手は不自由になり、新井のドリブルが活きてくる。

ドリブルで相手を躱わした先のプレーは長谷川という素晴らしいメンターがいる。守備のポジション取りは坂本が参考になるかもしれない。多くを吸収して1試合でも早く試合に出てきて欲しい。

50. 小川 慶治朗

新井と同じく、カップ戦でコンスタントに出場できているものの、リーグ戦の出場は無い。おそらく現在は1.5軍的な立ち位置なのだろう。裏を返せば、きっかけ次第でリーグ戦へ絡んでくる確率が最も高い選手の一人。カップ戦で相手の強度がそれほど高くない影響もあり狙い通りプレーできているケースも多いため、その辺りは考慮した上で考えていきたい。

ドリブルやフィジカル、テクニックなどのプレー強度は今のリーグ組と比較しても遜色ない。特にスピードはやはりチーム内トップレベル。あとはそれらを活かす個人戦術の向上が大事になる。インテリジェンスが低いというわけでは無く、現在志向しているサッカーで使える手札が元々多くなかったことで、戦術理解が少し遅れている。特に、ある程度守備も意識しながらボールを運び押し込む攻め方で、タイミングや位置が良くない場面もある。リスクを取るべき、取ってはいけない、失い方など。

(ハイプレス、プレスバック共に)プレッシングがかからない、いかない、いけない時が多い以上はなかなかファーストチョイスにはなりづらい。守備の意識も高いように見えるし、攻撃ではやはり違いも見せる。ポジション取りを含めた戦術理解を早く進めることで、リーグに絡んでいけるかに注目したい。

DF -Defender-

2. ンドカ ボニフェイス

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チーム内で最も対人が強く、特にフィジカル面の無理が効く選手の一人。ワントップにフィジカルモンスターを置くチームが多いJ1という舞台を大型補強なしで生き残っていくには、ボニのような選手に経験を積ませながら育てる覚悟とノウハウがチームには必要だ。

これだけオフザボールにフォーカスして話しているが、足元の技術に特段問題があるという訳でもなく、それどころか左右長短、臆することなくパスを供給する。

現状,"使われるCB"としては満点から及第点だが、指示役のガブ離脱後から失点に直結する判断ミスが多くなっている。もちろんガブが復帰すれば、あるいはカップ戦でアピールしている吉野がうまく統率できれば、ボニが再び高いパフォーマンスを見せる可能性はあるが。

ただ、チャレンジ&カバー、コースの限定など、守備原則の連携をボニ主導で統率できれば、それが最もチームにとっては財産になる。

失点数を抑えるキーマンになることは間違いないが、ここでポジションを失わないためにもここからの試合でしっかり結果を出したい。

3.中村 拓海

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現代的なSBの典型。中盤の選手のようにボールを持ち、俯瞰で最適なポジションを取り、相手サイドアタッカーに対応するスピードを持ち、時にはCBのように守備をする。

少し前は小柄で速いイメージが強かったSBだが、最近はもっぱら中村のような偽SBタイプが流行になっている。広いエリアをカバーしながら、高いプレー強度を要求される。そういった意味で、中村は世界基準の選手になれる才は十分に感じることができる。ただ、実現するフィジカルやインテリジェンス、テクニックは申し分ないが、プレー強度はまだまだ課題。特に守備はシンプルに穴を開けることも多い。

リスクを取るべきなのか、セーフティにいくのか、他に良い選択肢を見落としていないのか。考えながらプレーできるほどJ1は遅いリーグではないから、トレーニングやゲームの中で身体に染み込ませていくしかない。中村自身が高い意識でインテンシティ向上に取り組む必要もあるが、チームとして強度の高い練習をしていくことも同じくらい大事になる。

逸材を潰すか昇華させるか。勝負の2年目。

5. ガブリエウ

ガブがいればもちろん結果や内容は大きく違ってきただろう。それほど卓越した選手なのは間違いないが、これまでも比較的コンスタントに負傷離脱をしてきた中で、もしチームが彼依存になっていたのなら構造に問題があったとも考えられる。

負傷を不運だと嘆いていても仕方がないから、スカッド脆弱性を早い段階で発見できた・ポジション奪取(CB)のチャンスが来たとポジティブに捉えて、チームは次に向かってくれていると信じたい。

6. 和田 拓也

現在の戦術では、ゾーンディフェンスの際にSBの位置で守り、ビルドアップの際は中に入って中盤底から押し上げながら攻撃参加をする。

その中で、昨季に比較して体を絞り今季はフィジカルをSB仕様にして、あくまでボランチではなく偽SBとして挑んでいる印象。

その効果とインテリジェンスの高さもありSBとしてここまで守備はさすが穴を開けることなくこなしている。しかし、やはり裏のスペースを狙われた時はプレスバックで追走も間に合わなずという場面も。

そして本来得意である攻撃だが、ここまでは意外と苦戦している印象。原因が和田だけにあるわけではないが、効果的なパスをつけることが少ない。守備に欠点が0では無い以上、攻撃で差を生む必要があり、ポジションを確立していくためにはもう1段リスクを取るなりギアを上げたい。要求されているレベルは非常に高いが、和田なら期待に応えてくれるはずだ。

17. 武田 英二郎

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19. マテウス モラエス

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22.岩武 克弥

落下地点を正確に読むことで高さの不利を補い競り合いで勝つことはJ1でも通用している。得意のフィードもおそらく冴えているが、現状フリーの受け手がなかなかチームとして作れていない影響もあり良い展開を多く作ることはできていない。

課題はやはり対人のところ。2CBの場合はやはり中央の1対1で相手のFWを一人潰さないといけない場面がどうしても出てくる。そこを抑えるために都度味方のカバーが必要では、ゴール前のどこかでいつかスペースが生まれてしまう。彼本来のポジションであるSBや3CBであればボランチなどのカバーありきでも何とかなるが、CBとしてはやはり致命的になってしまっている。

岩武が悪いという話ではなく、あくまで起用の問題。あるいは彼のユーティリティ性に頼らざるを得ない台所事情の問題。岩武が良いCB(SB)であることに間違いはなく、チームもそれに自信があるなら、そろそろ3CBなどにチーム戦術を変更してくる可能性もある。

120%の働きをしている彼にこれ以上の要求はない。強いて言えばメンタルの部分。チームを引っ張る資格は十分にあるから、ピッチ内外で遠慮することなく発言をして、チームの守備をまとめて欲しい。

26. 林 幸多郎

ポジションを争う相手がチーム戦術の主軸である中村なこともあり出場は限定されているが、豊富な運動量と、さっそくJ1で通用することを証明する堂々の守備力を披露。危機察知能力も高く、若いのにガツガツしすぎず渋い守備対応を見せる場面も。リーグ戦でどれだけ再現できるかは見てみたいところ。

あとは攻撃だが、おそらく一般的な縦方向の攻撃参加(オーバーラップなど)であればある程度力を発揮してくれそうだが、現在のチーム戦術ではSBのタスクが攻守に複雑すぎるほどで、プロ1年目の林が急激にそこへフィットしていくのはなかなか難易度が高い。しかし両サイドをこなすセンスの高さで早くもスタメン争いに絡んでくる期待値も高く、もしかして代表招集により離脱した中村に代わり6節にでもスタメン入りする可能性は高い。

27. 吉野 恭平

ガブ離脱により、守備統制をしつつ最終ラインからビルドアップで流れを作る役割を主には岩武が(ボニと少し分け合う形で)行っていたが、カップ戦でCBに入った吉野が高い強度でビルドアップと守備を披露した。

ボニ岩岳コンビが少し気になっているのが、自分たちが主導権を握ってある程度ボールを押し込んだ展開でも二人で最終ラインに残ってしまっていて、攻撃に厚みができず間延び気味になっていること。細かく繋いでボールを保持するなら縦のコンパクトさが重要になる。その点で、吉野は積極的に押し上がり攻撃参加することで違いを見せる。カップ戦の強度とはいえ背後に穴を空けることも無く、MFもできる自身の特徴を最大限活かしつつCBとして及第点以上のプレーをしている。

リーグではスタメンこそないがメンバー入りを続けているため、カップ戦のアピールが実り、スタメン出場から大量失点が続く最終ラインを救う活躍に期待したい。

32. ヴァンイヤーデン ショーン

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34. 西山 大雅

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42. 橋本 健人

THE・攻撃的なSB。近年の横浜FCアカデミー出身者の特徴でもある高い足元の技術はもちろんベースとしてあり、加えてスピードのある積極的な攻撃参加で危険なクロスを量産。素晴らしいキックもあるため、戦術に慣れてくれば今以上にゴール(シュート)も狙ってきそうだ。

チームの決め事としてケアされているだろうから、橋本が上がった裏をロングカウンターなどで狙われるということはそれほど多くないだろうが、現状はシンプルにゾーンディフェンスをした状態でスルーパスなどで橋本の背後を使われ危険な場面を作られることが多い。危機察知をして周りも使いながら自分のエリアに絶対穴を空けないことはDF(SB)としては必須能力。J2では決定機が必ずしも失点に繋がらないことも多いが、J1での決定機はほぼ得点になると考えた方が良い。

守備が改善されない限り橋本がポジションを確立することは難しいが、左SBの序列はそれほどはっきりしていない状態なだけに、守備の戦術理解を早期に進めることができればスタメン奪取は近づきそうだ。

GK -Goalkeeper-

1. 永井 堅梧

チームの失点数が多く最終ラインのミスも目立っている状況だけに、賛否両論分かれている選手ではあるが、能力はしっかりと高い。

ブロと比較してセービングこそ劣るが、足元の技術やフィードは永井の方が数段上で、中短距離のパスやフィードも難なく味方につける。ビルドアップ時も、味方は怖がって出してこないが、本人の中でいつでも受けて捌ける位置に素早く動いている。

飛び出しは相手によって凄くはまる試合と、全くはまらない試合があり評価が難しいが、おそらく試合のスピード感と頭のイメージとにズレが生じている段階なのだろう。そこは試合勘と共にすぐに改善していきそうだ。

試合勘を掴みつつあったものの、結果を持って実力を周囲へ証明できぬまま負傷離脱することになってしまった。上から試合を見ることで戦術の理解を進めつつ、復帰後のポジション争いへ備えたい。

個人として何点か気になっているポイントはある。

(1)例えばロングボール。長いボールになると精度がミドルレンジと比較して大きく落ちてしまう。受け手と意図が合っていないというよりは、狙ったところに蹴れていない印象。キック力が足りないのか、強く蹴る時に軸足が安定しないのか。

(2)コントロールでボールが懐深く入りすぎて、チョンチョンとしてから蹴るので次のプレーが遅れてしまうことが多いのも気になる。少しでも次のプレーを速くすることで緩急も効いてきて、ボール保持にも余裕が出てくるはずだ。

21. 市川 暉記

永井が負傷したため、序列を考えれば市川がそのまま正GKとなるだろう。あるいは負傷に関係なく最初5節までは永井で固定して、結果次第で6節から市川に変更するというプランも元々あった可能性もゼロではない。

市川はオーソドックスな良いGK。シュートストップは相変わらずさすがで、セービングやビルドアップでの判断にも安定感が出てきた。

負傷に関係なく市川のライバルは永井ではなくブロ。同じシュートストップを特徴にしている以上、ポジションを得るためにはブロ以上に結果を残す必要がある。毎試合失点を重ね、ブロが負傷から復帰してきてそのままポジションを明け渡すなんてシナリオにはしたくないはず。勝負の年。調子のムラを無くし、プレーの強度を高くして1年を終えられるか。

40. 遠藤 雅己

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44. 六反 勇治

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49. スベンド ブローダーセン

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